こんにちは!
子育て主夫のダイナミック忍者(@dynamic_ninjya)です。
「人脈ってなんやろう?」
そんな問いに、ぼくの書いた短編小説「本当の自分に会える賢者のほこら」に登場するおっさんが答えます。
超短編の物語です。
ダイナミック忍者って何者?
と思われた方は、プロフィールページをご覧ください^^
賢者のほこら続編
「ドンドンドン!」
(仕事のできる若い兄ちゃんやな。)
おっさんは、そう思った。悩み相談を始めて20年あまり。最近ではドアをノックする音だけで、どんな人が相談に来たか分かる。
ギーーっ。
おっさんはゆっくりと古びた木の扉を開け、若者を中へ招き入れた。
畳んであったパイプ椅子を広げて、そこに若者を座らせ、ペットボトルのお茶を渡しながら、
「ようこそ。」
とニッコリ微笑んだ。
ほこらに住むおっさんはぶっきらぼうで一切笑わない、と聞いていた若者は少しびっくりしたが、椅子に腰掛けるや否や、こう切り出した。
「おじさん。ぼくは最近サラリーマンを辞めてフリーランスになりました。」
おっさんは唐突な若者の切り出しにも全く動じず、優しくうなずく。
「まず、人脈を広げようと思って異業種交流会やセミナーに行って名刺交換しまくっているのですが、なかなか人脈が出来ている気がしなくて。」
と若者がうつむくと、おっさんはコップのお茶をすすりながら、
「ほほう。人脈ねぇ。」
と天井を見つめる。
「人脈っていうのは、持ってる名刺の枚数ちゃうねんで。人脈っていうのは、、、」
おっさんはまた天井を見つめ、小さく2回、コホンコホンと咳払いをした。
すると、それに応えるかのようにワンワンという犬の鳴き声が、奥の部屋から聞こえ、1匹の少し汚れた老犬がトボトボ2人の元へ歩いて来た。
「かわいい犬ですね。」
若者はおっさんの返事の続きが気になりながらも、思ってもいないことを言った。
「かわいいやろ。ポチは芸もなんでもできるんやで。」
おっさんはそう言いながら、ポチの方に向き直り、
「ポチ、お手。」
と手を出すとと、ポチはおっさんの手のひらではなく、手首にそっと前足を置いた。
(これじゃまるで、ポチが脈拍を測ってくれてるみたいやなぁ。)
そう思ったおっさんは、ハッとして、若者の目を見てこう言った。
「で、そうそう、人脈な。人脈って言うのは名刺の枚数やないんや。脈って言葉が付くやろ。そこには繋がりという意味が含まれてる。しかも、想いや温もりが伝わるような繋がりや。」
若者は分かったような、分からないような感覚でおっさんを見つめる。
「手首に2本指あててみ。ドクドクしてるやろ?脈打ってるやろ?それが答えや。そこに血の通った繋がりがあるかどうか、それが一番大事や。」
感のいい若者はピンと来た。
「そうか、やっぱり人と人ですもんね。なんかぼく、名刺を集めることが目的になっていた気がします。ありがとうございました!」
若者は深々と頭を下げ、街へと帰って行った。
おっさんは、若者が座っていたパイプ椅子を片付けながら、
「ポチ、今日もヒントありがとうな。脈拍の脈、なぁ。」
と頭をなでてやると、ポチは尻尾を振りながらゆっくり奥の部屋へと戻って行った。
このおっさんと犬のポチが登場する短編小説を、電子書籍Kindleで出版しています。
サクッと読めるので、よかったらどうぞ^o^↙️